下園壮太『うつからの脱出』は具体的な対処を記した効果的な処方箋ではないでしょうか

 

評判になっていたので読んでみました。

以下はその読書メモです。

 

 

認知療法は魔法の療法ではない、とのくだりは興味深い。
もともとの自分の認知を「誤り」と認めるのに抵抗がある。
ディベート慣れしていない人には困難。
その指摘でクライアントが笑って認めたように見えても、内心は傷ついていることも多い。
自分が長年よりどころとしてきた考えを修正するのにはエネルギーが必要。うつの状態にあるクライアントにはハードルが高い。
また、回復期は「早く社会復帰したい」との思いが強くなり、服薬や通院ではなく自力で回復しようとする認知療法が逆に回復を遅らせる原因にもなりかねない。
リハビリ期には「考え込む特性が現れる。これを「症状の1つ」とクライアントに説明。自殺したくなるのも症状の1つであり、「生きがい」について考えたくなるのも症状の1つとしてカウンセリングにあたる必要がある。
これから派生して「仕事を辞める」「離婚する」のテーマに発展するケースも多い。その場合には、「しばらく棚上げして、元気になってからスッキリした頭で判断しましょう」と対応。問題を否定せず、しかし意識しすぎないように向ける。
回復を焦るクライアントには、何回も落ち込むこともまた、回復の過程であることを説明する。

心裡療法のためのチェックポイント
1. いまのクライアントの回復レベルに適合しているか
2.そのクライアントの性格能力などの特性(ねばり強いかあっさりか、思考中心か感覚中心か、マイペースでやるタイプか誰かに引っ張ってもらうタイプか、など)に適合しているか
3. クライアントを取り巻く環境(時間、資金、周囲の人の支援、仕事環境)に適合しているか
4. カウンセラーはその療法をうまく指導できるか

これをチェックして、トレーニングの効果より副作用(逆効果)のほうが大きければ、あっさりトレーニングをやめ、まだ休憩と投薬の時期だと考えたい。

筆者が推奨するいくつかのプチ認知療法を紹介。
「マジカル40」は、別名400回、40回の原則。科学的なものではないが、「人は自分を変えようとするとき400回の刺激を受け、40回失敗して初めて変化する」という経験則に基づいている。具体的には、失敗した回数を40回数える。20回ぐらいで気にならなくなることが多い。そこで「捨てる」か「続ける」かを判断すればいい。

エゴグラムも加味して認知療法の効果を考える必要がある。

フォーカシング
リハビリ期は周囲の顔色をうかがう傾向があるので、自信を付けるための自分の気持ちを大切にするフォーカシングのトレーニングが効果的。
フォーカシングでは9つの手順を踏む。フォーカシングによる気付きはあってもなくてもいい。逆に、「本当のフォーカシング」を求めないように注意しなければならない。

数え呼吸法(アレンジ数息観)
自分の呼吸を100まで数えるトレーニング。ルールが少なく、どうすれば効果が出るのかといったトレーニング中に浮かぶ不安を超える練習ができる。

動作法
からだを意識的に緩めて効果を得ようとする方法。
肩のストレッチ
肩上げ下ろし

目標を明確化・細分化する
「元気になりたい」→クライアントが具体的にどんな状態をイメージしているのかを聞き出す。そしてそのイメージをさらに具体化してもらい、どの段階にいるかを自覚できるようにする。大切なのは、目標達成までの期限を切らないこと。からだと相談しながら、時にはブレーキをかける、かけてもらうことも重要。

回復日記
回復期は、回復度合いに疑問を持ちがちになる時期でもある。悪いほうばかりを見ないようにするために、できたことをメモ書きしておくというトレーニング。カレンダーへのメモ程度でもよく、見返すことで効果が高まる。

7対3
「したい(目標)」と「しない・できない(不安)」のどちらを軸に考えるかをクライアントに決めてもらう。それぞれを加味して、7対3の割合で満たすような行動を探す。

医者とクライアントの付き合い方は、カウンセラーが指導すべき。
ドクターショッピングは治療を混乱させ病気を長引かせる原因。
病状の変化や薬の副作用などは、躊躇せず医者に報告・相談すべきと後押しするのがカウンセラーの役目。
クライアントに医師との会話のリハーサルをするのも効果的。

 

 

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