デジタル遺品問題の深刻さはリアル遺品の比ではないようです

「デジタル遺品を考えるシンポジウム」に参加しました。

遺品整理という作業は、それはそれで物理的なたいへんさを伴うものです。

しかし、見えるぶんだけ、対策のたてようもあると言えるわけです。

ところが、デジタル遺品の厄介なところは、見えたり見えなかったりするところ。

見えても(パスワードがかかっていることで)アクセスできなかったり、見えなくて存在自体の確認が困難だったりすると、片付けようにも手が出せないことがありえるのです。

そんなデジタル資産が、今後はどんどん増えるはず。

考えてみれば、資産と考える「大切なもの」は、その持ち主が隠そうとするわけです。隠しているからこそ守られるのですが、隠していると探すのがタイヘンであるのは自明の理。

本人ですらアクセスのハードルを上げて守りを堅くしようとするのがデジタル資産の流れなのですから、本人の存在が曖昧になったり亡くなってしまうと、その処理が困難を極めるのは想像に難くないわけです。

では、シンポジウムのときのメモを貼り付けておきます。

 

「デジタル遺品を考えるシンポジウム」メモ

デジタル遺品とはなにか(ライター、デジタル遺品研究会ルクシー代表 古田雄介)
デジタル環境を通してでしか実体をっかめないもの
・デジタルデータそのもの
・データを作るもの
・データを保管するもの

☆デジタル遺品特有の問題
・本人以外からは見えにくい
・管理がそれぞれ
・ロックが強固
・内容が混在(本人が隠したいもの/家族が知りたいもの/どうでもいいもの)

動産であれば死後にどう処分するかを考えやすい

☆デジタル遺品を取り巻く実情
・業者は原則として立ち入らない
契約の解除はするがロックははずさない
引き継ぐ契約もある
・銀行や証券会社はリアル店舗に準じる
・一身限りが多い=IDを引き継がない
・日本は未だ法整備が手付かず
・相続に関する規約のある仮想通貨取引所はない
・ポイントは原則として相続不可(マイレージは可能なケースも)

☆消費者の動向
・ネット利用率の上昇(60~70代)
・金融商品の電子化やフィンテックの拡大
・行政サービスの電子化(e-Tax、お薬手帳、PHR、母子手帳など)

☆課題
・パスワード管理
・不正アクセス禁止法、個人情報保護法、一身専属性と承継可能な契約
・代理店やディーラーなどサポートの不在

今後の需要は拡大

デジタル終活と日本の法律~法律からデジタル遺品を考える(弁護士・公認会計士/日本デジタル終活協会代表理事 伊勢田篤史)

パソコン・スマホを開けられず葬儀の連絡ができない事態も

オフラインデータ
PC、スマホ上のデータ(物権)
オンラインデータ
ネットサービスのアカウント等(債権)

アメリカFADAAの適用

日本では民法によって処理せざるをえない
オフラインデータは相続できない
所有権が認められないと考えられるから
処分は可能
機器は遺品のため所有権の対象になる
オンラインデータは相続できる?
一身専属性があるなしで変わる→利用規約による

☆問題点
オフラインデータは相続では問題にならない
しかし、事実上の処理で問題になる
オンラインデータ
法整備はまだまだなのでデジタル終活は必須

仮想通貨と相続税の問題
遺族がアクセス出来ずにトラブルになる可能性も!

サービスの課題 (デジタルデータソリューション株式会社 代表取締役 熊谷聖司)
データに関するトラブルが多発する現代
解決・対策の需要は高まるが参入の技術・スキルの障壁も高い
デジタル・リカバリーの延長でデジタル遺品の対応サービスも

☆現場から見た課題
・2017年9月~ 81件のケース
依頼はスマホが圧倒的に多い
「消してしまったから復旧してほしい」「パスワードがわからない」
・思い出の写真を取り出したい
・会社のデータを受け継ぎたい
・自殺原因を追求したい
・相続トラブルの証拠を取り出したい
・仮想通貨の相談が増えている

遺品の捜査依頼は10~40代が7割以上
→年配者にデジタル遺品への意識を高める必要あり

☆認知度向上のために
デジタル遺品≒ネットユーザー≒若年層
年配者に対するPR強化
葬儀業界は最大手でもシェア3%
より協力体制をとってデジタル終活を広めていきたい

もしもの時の緊急連絡先カード(一般社団法人つむぐ)
行き倒れて入院しても家族に連絡が届くのが2~3かかるケースが増えている
相続手続
被相続人の財産を把握できていない
手続きも多く煩雑
→サポートの必要性

パネルディスカッション「デジタル遺品のガイドラインを作ろう」
* スマホのロック問題の効率的解決
* 4ケタならできるが…
* iOSの6ケタpwは難しい(⒏x以降はほぼムリ)
* データの復旧によって休眠していた金融商品などもあぶり出すことは可能
* 対策はあるが、出来ればデジタル遺品の前段階で準備したい
* WEBサービスの利用規約
* 一身専属かどうかをを明記すべき
* 今後は明記の方向が望まれる(トラブルで問題化して対処しなければらならくなる前に)
* フリーのアドレスで作ったIDのサイト→本人確認の問題(SNSとマイナンバーとの紐付けなど)
* 法のサポート
* データポータビリティの流れに乗れるかがポイント(EU一般データ保護規制)
* デジタル遺品のサポートの広まり
* 死亡時全公開などの前提がないと議論は進まない?
* 少なくとも生前に仕分けしておくべき

法整備については「危機感を煽る」ことで醸成
生前整理の必要性をさらに広める努力も
「遺したい」ニーズと「隠したい」ニーズの棲み分けとそれぞれの対応策

1回目は2017年3月
この1年で環境は大きく変化
仮想通貨問題でデジタルに注目
危険性と重要性の提起
事例の提供

 

古田雄介『ここが知りたい!デジタル遺品』

デジタル遺品に関心がある方はもちろん、デジタル資産があるのに危機意識が薄かった方には特に、注意喚起の一助になればと思います。

このシンポジウムのコーディネートをしていた古田雄介さんが、『ここが知りたい!デジタル遺品』という著書を上梓されています。

当日は参加費を支払うとこの本を1冊いただきました。

読了したので、興味深かった部分をおすそ分けしたいと思います。

 

遺族が故人のデジタル遺品を扱う時に注意しなければならないのは、不正アクセス禁止法です。

これについて本書は、「それほど恐れなくてもよいが」としながら、個人のアカウントのままでログインし続けるという行為を続けるのは良くありませんとしています。

つまり、故人のデジタル遺品を処理する目的でアクセスするのは問題にならないけれど、アカウントのなりすましとしてアクセスし続けるのは良くない、というわけです。

デジタル遺品の処理のためのアクセスというのは、例えば相続のための調査を目的としたものなどです。

このような目的がはっきりとしたものであれば、後々、アクセスが問題視されたとしても、その正当性が証明されるはずです。

また、デジタル遺品の目的物であるデジタルデータは、取り扱い注意しなければ消滅してしまうというリスクもあることを忘れてはいけません。

残す方の立場にとって、デジタル遺品を考えるときに大切なのが、「託すもの」なのか「隠すもの」なのかをしっかり線引きすることだとのこと。

「託すもの」というのは、遺族が知らなかったり分からなかったりすると困るものです。

お金関係はもちろん、契約に関するものや、人間関係に関するものが該当します。

反対に「隠したいもの」は、知られると困ったり、お互いに嫌な気持ちになることが考えられるものです。迷惑になるものは、残さないようにするか、見えないようにする配慮をしたいものです。

死後削除アプリというものもあるそうなので、自分の考えにあったもので準備出来るかもしれません。

こうした処理に関しては、第三者が理解できるように整理されていれば、死後事務の委任契約で処理してもらうことも可能だとか。

信託口座は死後に財産の処理委任できることは知っていましたが、デジタル資産に対応したサービスも出てきているようです。

いずれにしても、家や車の鍵以上にパスワードの重要性は増していて、今後はさらにデジタル資産の扱いへの認識を高めなければ、まさに「命とり」になりかねない世の中になることは間違いないでしょう。

デジタル遺品をスマートに残せることこそ、これからのスマート社会に求められるリテラシーなのではないでしょうか。

 

 

 

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