「ひきこもり新聞」にフォーカスした紹介記事自体がひきこもっていた件について

 

ひきこもっていた側の心情にフォーカスした記事があったので、紹介しましょう。

10年間ひきこもった経験のある編集長を筆頭に、当事者と経験者だけでつくる「ひきこもり新聞」が今月、創刊1周年を迎えた。自分たちと思いがすれ違う親世代や支援者に、心の内を伝えたい。当事者をつなぎたい。そんな気持ちで紙面を作っている。

編集長の木村ナオヒロさん(33)は、通算10年間ひきこもった経験がある。

ひきこもって9年目。木村さんの一人暮らしの家に、突然警察官2人と保健所の職員2人が現れた。

木村さんを心配した両親が連れてきたのだが、事前に何の話もなかった。警察官たちの姿に驚いた木村さんはパニック状態に陥り、その場で両親と怒鳴り合いになった。結局、誰も部屋に入れずに追い返した。「この出来事で親を恨むようになり、関係が悪化しました」

ひきこもる最初のきっかけは、大学受験に失敗したことだった。突然ベッドから起き上がるのがしんどくなった。調子が良ければ起き出すが、横になったまま天井を見て過ごす日も多かった。

病院に行く気は起こらず、通販サイトのアマゾンで評価の高い心理学の本を買っては読みあさったり、サプリメントを50種類ほど試したりしたが改善しなかった。不調の理由が分からず、苦しかった。

そういう状態でも、「自分がひきこもりだと思っていませんでした」と振り返る。9年目に警察官が来たときも、まだ自分をひきこもりだとは思っていなかった。「テレビに映っている、散らかった部屋でゲームをしているイメージと自分はほど遠く、絶対違うと思っていた」

自分とひきこもりを重ね合わせたのは、2年ほど前。精神科医の斎藤環(たまき)さんのカウンセリングを受けるようになってからだ。斎藤さんのひきこもりについての著書も読み、登場する当事者の状況や気持ちが自分と似ていると気づき、自覚したという。

同じころ、自立や就労のためと称して支援団体が当事者の部屋に押し入り、意に反して寮などに連れ去る様子がテレビで肯定的に特集されているのを見た。

自分の体験を思い出した。

「当事者から親、支援者に現状や心の内を発信しなければ」

そんな思いに駆られた。

斎藤さんのすすめで当事者の集まりにも出るようになっていた。集いで「発信したい気持ち」を話し、共感してくれた仲間とともに昨年11月、「ひきこもり新聞」を創刊。紙媒体の新聞を選んだのは、ネットが苦手な親世代にも届くと考えたからだ。

新聞は隔月刊で毎号、「当事者発」の記事が紙面を埋める。

ひきこもり10年、警察頼った親恨み「心の内伝えたい」|朝日新聞デジタル

 

この記事に出てくる「ひきこもり新聞」とはこちら。

ひきこもり新聞 http://www.hikikomori-news.com

「ひきこもり当事者による当事者のためのメディア」を掲げ、当事者としての視点で情報発信を続けているようです。

私は、ひきこもるという行為は、個人の自由であると考えます。

だから、ひきこもるのも自由だし、出てくるのも自由。

でも、ひきこもってから出てくるときに、社会的な抑圧がハンパないことも事実でしょう。

それが「そろそろひきこもるのを止めようと思ったのにそれができない」という、自由を阻害される状況があることが問題なのだと思うのですね。

こうした当事者からの活動によって、いままで見えなかった(ワガママだともとらえがちだった)ひきこもる側の考え方が表面化して、理解するためのきっかけになることはとても大切だと思います。

朝日新聞デジタルの記事は、そうした大切なきっかけを与えるものであるのに、記事の半分だけ公開して、「つづきは有料だよ」というのはえげつないですね……。

「熱風」に東京新聞を特集した記事があって、とても読み応えがあったのですが、大新聞がこうした“吊り”をするようでは、メディアとしての復権に支障が出てしまうのではないのかと心配してしまいます。

全文を読ませて、こうしたまっとうな意見をもっと読みたいという流れを作っていくことが大切なのではないかと思うのですが……。

記事が「ひきこもり」しちゃっているようでは、せっかくの問題提起も台無しだとおもうのですよ。

 

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