新型コロナと尊厳を守った死について

米ニューヨークでは病院の前に冷凍コンテナが横付けにされていたり、日本でも最期の挨拶もできずに焼き場へ送られてお骨としか対面できなかったりといったニュースがあったのが、2020年の第2四半期。特に、岡江久美子さんが無言の帰宅をした映像は衝撃も大きかったと思います。

この記事では、東京都の借り上げ施設として遺体の受け入れを行なった葬儀貸し式場を取材、コロナ死者のための「お別れ代行式」を紹介しています。

コロナ葬儀のガイドラインの表と裏

厚生労働省では7月にガイドラインを出して、死者にふさわしい送り出し方の配慮を求めていましたが、原則として感染防止の観点から、遺体には触れないということがハードルとなり、尊厳ある送り出しが不可能な状況だったようです。

また、受け容れる葬儀社側も混乱していて、断わるだけでなく、消毒を条件に数十万円の上乗せで請求する、「悪徳」と呼ばれても仕方の無い業者もいたようです。

これに対して東京都では、受け容れ専用の施設を設けた、というのが前述の葬儀貸し式場「想送庵カノン」の話で、以下のようなお別れ代行式を考えたということです。

病院から「想送庵カノン」に到着した棺は、区分けしたゾーンに入り、丁寧に消毒される。その後、安置室に入るのだが、こちらの場合は、倉庫のような殺風景な安置場所に棺が並べられるような光景はない。 テーブルと椅子が配置された広々とした空間に花や仏具などが配置され、可能な限り故人の尊厳を最大限配慮した形で安置されるのだ。 火葬までの間は、家族に代わってスタッフが線香を焚き、故人と向き合う時間を設けた。

コロナに限らない葬儀リスク

この葬儀社に運ばれる遺体の6割が、まだコロナが原因で死亡したと判明していないものであることも、意外でした。

というのも、急変して死亡することが多い新型コロナでは、その死因を特定するためのPCR検査の結果が出るまでにタイムラグがあるため(3〜4日と言われています)、疑いがあるだけでこうした“処理”をされてしまう、というのです。

しかも、陰性の場合に遺族との対面が叶っても、原則として遺体になんの処置もしていないために、対面できるような状態ではないというのです。

「想送庵カノン」では、東京都と受け入れの契約を交わす際に、以下の条件を入れることにしたそうです。

ご遺体の尊厳を守るために陽性・擬陽性にかかわらず、全てのご遺体にドライアイス処置をすること

これはつまり、裏を返せば、遺族に合わせず焼き場へ直行せざるを得ない状態であることを示しているわけです。

まとめ

現在、「想送庵カノン」は東京都との契約を終了し、コロナ遺体の受け入れはない状態ということです。

都の施設が受け容れればいいと思っても、そうカンタンにはいかないようで、これもまた縦割りの行政の課題が浮き彫りになっているみたいですね。

でも、「想送庵カノン」ではノウハウを蓄積、共有したいとしているので、手探りではないところが希望かもしれません。

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