デジタル終活の手順について
具体的に、自分がデジタル関係の終活をする場合を想定して、手順にまとめてみたいと思います。
なお、この作業では、遺品として遺すものをどうしておけばきちんと遺せるのか、遺したくないものをどうしておけば処分というかたちにできるのかという観点で見ていきたいと思います。
1.パソコンやスマホなどの情報端末
情報端末は、端末ロックをかけていることが一般的です。
遺したいデータにアクセスしてもらうには、この第一関門を突破してもらわなければ、始まらないのです。
端末ロックを解除するパスコードは、遺言書としてきちんと文字に記しておくべきです。
iOSではAppleID、AndroidではGoogleアカウントも同様です。
情報端末のロックを解除できるということは、そのパスコードを知らせた人が、自分と同じようにその情報端末を操作できることを意味します。
見られたくないデータ類は、あらかじめ処分しておくか、ロックをかけられるフォルダで管理して、そのパスコードは公表しないといった措置が必要です。
2.デジタル資産へのアクセス
ネット銀行、ネット証券、仮想通貨、電子マネーのアカウントは、遺産として引き継ぐことができます。
しかし、アカウントがあることはわかっても、アクセスできなければ手の打ちようがありません。
機関ごとに名称とURL、それぞれのID、パスワードを、これも文字に記して遺しておく必要があります。
また、利用していた各種ポイントのほか、アフィリエイトやクラウドソーシングの口座の未払金なども、遺すことのできる資産です。
同様に文字に記して遺しておくようにします。
3.放置できないもの
実は、資産として遺すものを考えるのであれば、どうすれば遺せるかを考えるときに、真っ先に手を打たなければならないのが「放置できないものの措置を講ずる」です。
ストレージサービスやレンタルのホストなどは、契約者が亡くなって支払いのクレジットカードや金融口座が凍結されると、自動的に契約が終了してしまいます。
つまり、そこに置かれていたデータ類には、アクセスできないどころか、消去されてしまうのです。
アカウントのパスワードがわからなくてアクセスできない状態であれば、専門家に依頼して解錠してもらうという可能性が残りますが、契約が切れてしまったら、お手上げです。
あらかじめ遺品とするデータは別の場所や状態に保存することを考えておきます。
4.死ぬ前にやるべきことと死んでからでも大丈夫なことを分けておく
遺しておく方法について触れましたが、それぞれについて「死んでからでも間に合うもの」と「死んでしまったら間に合わない」対応があることに注意しなければなりません。
簡単に言い直すと、遺族であれば対応できるもの、遺族であれば対応できるけれどプロを頼まないと無理なもの、プロでも無理なもの、の3つです。
そのうちの3番目、プロに頼んでも無理な状態にならないようにしようというのが、3での対応でした。
遺族であれば対応できるものは、リアル金融機関口座のように、死亡証明書などがあれば、引き継ぎの手続きができるという意味です。
ネット銀行でもこうした窓口を設けてあるところがあるので、口座の存在とともにその旨を文字に記して遺しておくことが必要です。
ネット系の口座の場合、通帳など口座の存在がわかる“目印”がないことも多いので、こうしておかないと気づかれないわけです。
SNSなども、直接の遺産としてカウントされることは少ないでしょうが、「いつまでも生きているようなるので困った」といった、遺族の見えない被害を生むこともあります。
Facebookでは追悼アカウントに変更できる申請窓口があるなど、故人アカウントの対応もSNSごとにその方針を打ち出すようになってきました。
アフィリエイトなど、資産的な価値があれば「引き継ぎ」の可能性も出てくるでしょう。
消滅させるのがもったいないと思うのであれば、引き継ぎができそうな人を探しておいて、その手順を伝えておくことも考えましょう。
また、SNSは知人への連絡網としての機能もあるので、「自分の訃報を知らせる手段」として準備しておくことも、デジタル時代の終活のひとつと言えるのではないでしょうか。
5.遺したくないものを処分する
人間なら誰でもナイショにしておきたいものはあるはずではないでしょうか。
デジタル遺品にも、「アクセスしたいのにできないから困った」というものがあれば、「アクセスを許してしまったばかりに見られたくないものまで見られるようになるのでは?」という不安が発生することもあるわけです。
この不安を取り除くには、「死ぬ前に処分する」か「わからないようにしておく」といった一時的な措置のほかに、「死後削除サービス」を利用するという二次的な方法もあります。
Windows限定で「僕が死んだら…」や「死後の世界」といったアプリを利用すれば、前者ではそのアプリのアイコンをクリック、後者では最終起動から決められた日数の経過後に、指定されたファイルやホルダーが自動的に削除されるというものです。
まとめ
就活で遺品や遺産について考えることは、避けては通れません。
しかし、遺す人が考える遺品や遺産と、遺される人が考えなければならない遺品と遺産は、同じようには考えられなかったり、措置に大きな違いがあることを忘れてはいけません。
大きなポイントは、自分が遺しておこうと思ったものは生前でも遺品や遺産として考えることができ、そのための措置を講じることが可能である場合が多いこと。
反対に、遺される側が講じることができることは、かなり限られます。
それだけに、その遺すことが「ためを思って」のことであればあるほど、可能性の多いときにやっておくべきなのだと思うわけです。