令和5年の相続ルール大変更について
相続土地国庫帰属制度
2023年(令和5年)4月27日施行の制度で、相続した不要な土地を国が引き取る、というもの。
この問題は「負動産」という表現で、数十年前から話題になっていた。
国や地方自治体への寄贈という例も初期にはあったと聞いているが、その数が増えてしまったために、従来のルールどおりに相続した人が責任をもって管理しなさいということに戻ってしまった。
しかし、相続によるを避けるために相続登記を放置、そうした放置が重なることによって所有者を確認することが困難になる事例が時とともに増え、国も重い腰を上げざるを得なくなったわけだ。
注意点は、土地のみ(建物がある場合は不可)、利用者はいないこと、権利設定(担保権など)がないこと、境界等が明確であることなど、土地取引の一般的な条件をより厳密に適用させていて、オールクリアしなければいけない。
詳しくは法務省チェックシートの18項目を参照のこと。
さらに、国も多では引き取ってくれないので、審査手数料が負担金が発生することも心得ておく必要がある。
こうした制度導入には代行業も発生することが予想される。手数料などボッタクリも考えられるので、複数の業者を比較したり、全体の流れをしっかりと説明できる業者を選ぶなど、相続リテラシーを上げておくことも重要だ。
また、相続全般でも言えることだが、共有者がいる場合は全員の同意が必要になる。これがネックで相続を後回しにすることも多いわけだか、それを許さない包囲網が、着々と進められたという印象だ。
ただ、変更されたとしてもスムーズに相続できる(したくなる)ものではないし、「狭き門」であることは変わりがないが、国引き取りの審査を前提とした相続準備ができるようになったという程度の国民側のメリットは生まれたかもしれない。
記事では税理士の指摘として、書類の準備や審査期間を考えると被相続人の負担は大きく、かつ申請しても受理されるとはかぎらず、申請すらできないケースが多いのではないか、としている(井出正一税理士・談)。
遺産分割ルールの変更
2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法で、遺産分割協議による相続の放置をさせないため、一定期間内(約10年内)に完結しない場合、「特別受益」や「寄与分」を受けられなくした、というもの。
一定期間を過ぎると、「原則として法定相続分での遺産分割しかできなくなるのだ。
この目的は、遺産分割でモメた場合、結着がつかずにズルズルと長期化して相続が成立しないことを防ごうというところにあるだろう。
ある意味”時効”のようなもので、一定期間を過ぎれば法定相続分以外で解決しなくなるから、争う側は一定期間内に妥協するか、争われる側は一定期間を(ムダにはなるが)待って、そのタイミングで相続を完了することができるようになったわけだ。
相続登記ルールの変更
遺産を相続した遺族である相続人は、その相続を知ったときから3年以内に相続登記の申請をしなければならない旨の不動産登記法の改正が、2024年(令和6年)4月1日から施行される。
正当な理由なく登記申請を行わない場合、最大10万円の過料が科せられるという、罰則つきの変更だ。
前段のような遺産分割協議が長引いているケースも、「相続人申告登記」という手続きをしておかないと罰則の対象になってしまう。
まとめ「相続ば守りから攻め”の時代へ」
以上のように、2023年から2024年にかけて、相続に関する法整備(放置対策)が一段と進められることになった。
人口減少で空き家が増え、固定資産税徴収にも支障が出る案件とあって、今後も制度の不具合は修正されていくことが予想される。
個人的には、いよいよ本格的に相続という人生の一大イベントが、待っていて来たら仕方なく考える“守り”のものではなく、先手を打って備える“攻め”が必要になり、その環境も整ってきた(あるいは外濠を埋められつつある)と感じるニュースだった。
それだけに、家族信託や相続時精算課税制度などを有効に活用できるよう、スキルアップしていきたいと思っています。
参考: 4月末に「相続のルール」が大変更された!遺産分割・登記…知らないと損すること全部 |DIAMOND ONLINE