終活に宗教というバックボーンを持ち込むことについての私見
終活トータルガイド、
生き方のお片づけアドバイザー、
心理カウンセラーのトミザワです。
テレビのニュースかネットの記事で
見たのだと思うのですが、
臨床宗教師というお仕事がある
ようですね。
そこで、臨床宗教師について
少し考えてみたいと思います。
臨床宗教師とは?
映画で見た記憶があるのですが、
欧米では病院スタッフに
チャプレンと呼ばれる人が
いるようです。
このチャプレン、宗教関係者で、
患者さんの世話や話し相手に
なる役を務めているそうです。
このチャプレン、病院だけではなく、
警察、消防、刑務所、軍隊、学校にも
配属されているそうです。
カウンセラーよりも早く、一般的に
認知されていたのですね。
宗教者が社会的に認知された立場に
身を置くというのは、日本では
あまり一般的ではないかも
しれません。
日本でこのチャプレンへの意識が
高まったのは2012年。
東北大学が実践宗教学寄付口座を
開設し、臨床宗教師の開始しました。
この臨床宗教師、
学んだ宗教を布教や伝導にではなく、
カウンセリングのツールに用います。
クライアントは死期の迫った患者、
心にきずを負った人などなど。
その背景には、東日本大震災が
あるとのことです。
911アメリカ同時多発テロで、
チャプレンが消防隊員の心のケアを
したことも影響したようですね。
日本版チャプレンの講座では、
宗教宗派の枠を越えて学ぶのも
特徴だと言えるでしょう。
日本における宗教の必要性について
日本では、死にまつわる場面で
宗教者がかかわることがほとんどない
と言われています。
たしかに、死後の儀式を担う役割は
あるものの、死を前にした当事者
との関係性は薄い気がします。
私は20年ほど前に「がんを考える」
という団体事務局のお手伝いを
していたことがあるのですが、
そのときも緩和ケアや
ペインコントロールの話題が多く、
心の問題への踏み込みは今一歩、
という印象がありました。
そのころから
クオリティ・オブ・ライフ
という言葉は一般的になりつつ
ありましたが、そこに宗教の
入る余地はまだまだなかった
と思います。
これが最近では、当事者や家族の
苦痛に対して4つの面からケアを
しようという動きが活発に
なっていると言います。
4つとは、身体的、精神的、社会的、
そしてスピリチュアルです。
これらを包括的にサポートすることで
トータルな苦痛を和らげようという
考え方です。
そして、第4のサポートである
スピリチュアルな悩みを解決する
手助けをするのが臨床宗教師
というわけです。
しかし、日本は無宗教の人が多い
国であるとも言われます。
信仰を持っているかどうかを聞いた
調査では、だいたいが2割程度しか
「持っている」と答えないという
結果があるというのが日本の実状
のようなのです。
しかし、その宗教が無駄とは考えて
以内という調査結果もあります。
死を前にして宗教が心の支えになるか
という問いに対しては「なる」という
答えが過半数を超えました。
これは「ならない」という回答が
1/4ほどであることを考えると
かなり要望と実状が乖離している
ことを示しているようです。
臨床宗教師に求められることとは?
死への恐怖は、自分が置かれた環境に
不安があるほど増すという統計結果が
あります。
そして、その恐れが人生最後のQOLを
低下させてしまう原因になります。
先述の4つのサポート要因のうち、
身体的なものは医療によって、
精神的なものは看護・介護によって、
社会的なものは制度や活動によって
まかなわれています。
不安は自分でなんとかするもの、
という風潮が日本ではまだまだ
強いのではないでしょうか。
心の問題は本人しか解決できない
という考え方もはびこっている
ように感じます。
しかし、アンタッチャブルだった
心の問題に寄り添えなければ、
トータルなQOLが向上しないのは
明白でしょう。
そしてそれを担えるだけの
人間研究をしてきたのが
宗教であることは否定できません。
現世利益のイメージが先行して、
死を考えることをタブー視している
という先入観があることも、
日本での宗教観に影響している
ように思います。
教義をマニュアルとして律する術に
するのではなく、カウンセリングの
ひとつのツールとして応用する
汎用性を持たせることも、
これからの宗教には求められる
のではないかと思うのです。
その意味で私は金剛界曼荼羅を
カウンセリングのツールに活用
できるのではないかと考えて
いるのですが、それはまた
機会を改めて書きたいと
思います。
参考:わが国で臨床宗教師の活躍の場は広がるか(主席研究員 小谷みどり) http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt1408.pdf